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技術コラム

高精度なプレート切削加工品を入手するための設計ポイント

高精度なプレート部品を求める場合、加工技術だけでなく、設計段階での工夫が仕上がりの精度やコストに大きく影響します。本記事では、寸法精度や表面品質を確保するために設計者が押さえておきたい3つの重要な観点を解説します。

材料の選定

プレート切削加工品の精度を決定づける最大の要因の一つが「材料の選定」です。加工性、剛性、熱膨張、内部応力など、材料特性は精度と加工コストの両面に大きな影響を及ぼします。

例えば、アルミ材の中で汎用性の高いA5052は、切削性に優れ、幅広い用途に対応可能です。一方、A7075はアルミ合金の中でも最高クラスの強度を誇る素材ですが、反面、加工中の歪みや反りが出やすく注意が必要です。とくにA7075は、内部応力を抑えるためにT651処理(溶体化熱処理+人工時効処理+応力除去)を施したものを選定することで、精度面でのリスクを大きく軽減できます。

アルミ材全般に共通する注意点として、熱膨張係数の大きさが挙げられます。温度変化による寸法変動が起こりやすく、穴ピッチなどの厳しい位置度公差を求める場合には、加工工程中に都度寸法を確認しながら慎重に進める必要があります。こうした工程管理が工数増加とコストアップにつながるため、設計段階での考慮が不可欠です。

ステンレス材においては、切削性を優先するならSUS303が最適です。硫黄やリンの添加により被削性が向上しており、加工コストの低減にも寄与します。SUS304は耐食性と溶接性に優れた最も汎用的なグレードであり、食品・建築・機械など幅広い分野で使用されています。さらにSUS316はモリブデンの添加により塩素環境下での耐食性が強化されており、海洋・化学用途に最適です。ただし、SUS304やSUS316は硬度が高く、切削工具の摩耗を招きやすいため、工具代がかさむ点には注意が必要です。

また、材料内部の残留応力にも目を向ける必要があります。圧延材などは内部応力が大きく、切削加工後に反りや歪みが発生しやすいため、反り取りや再加工の手間が発生し、結果としてコスト増の要因になります。必要に応じて、焼鈍処理を施すなどの応力除去対策を取り入れることが有効です。

また、圧延材などの材料は残留応力を多く含むため、加工後に反りが出やすく、反り取りや矯正に時間がかかることでコストが増加する傾向にあります。

設計時の寸法公差の設定

高精度加工を実現するには、図面上での公差設定も非常に重要です。許容誤差の大きさが加工の難易度とコストに直結するため、設計段階での判断が製品のQCDに大きな影響を与えます。

一般公差は±0.1~±0.5mm程度が目安となりますが、部品の機能や重要度に応じて、平面度、直角度、同心度といった幾何公差を適切に設定することで、より正確な仕上がりが期待できます。特に、材質によっては平面平行が出しづらい場合もあるため、材質の特性を踏まえて設定することが重要です。

さらに、高精度を要求する場合は、切削加工に加えて研削加工を組み合わせることで、±0.01mmの精度を実現することも可能です。

プレート加工においては、一般公差内に反りや歪みを収めることも重要です。特に長尺や薄肉のプレート、あるいは抜き加工をする形状では反りが発生しやすく、加工時に十分な反り対策が求められます。こうした形状を避けることで、QCDの向上に繋がるため、設計段階でご検討いただくことをお勧めいたします。

加工後の仕上げと表面処理

加工が完了したプレート品には、仕上げ処理と表面処理を施すことで、性能や外観の向上が図れます。これもまた、設計段階から計画しておくべき重要な要素です。

例えば、バリ取りや微細な研磨処理は、微小なバリが機能に悪影響を及ぼすことを防ぐために不可欠です。図面に「バリやバリの返りなき事」などの記載を加えることで、加工者も処理内容を明確に把握できます。また、表面粗さに関しては、Ra0.8(Rz3.2)程度であれば切削加工のみで対応可能ですが、それ以上の仕上がりが必要な場合には、研磨や鏡面仕上げなどの追加工程が必要となります。

表面処理も用途に応じた選定が重要です。アルミには耐食性向上のためのアルマイト処理が有効で、鉄材には黒染め処理や亜鉛メッキが防錆対策として機能します。さらに、アルミ・鉄系材には、均一な膜厚と高い耐摩耗性を得られる無電解ニッケルメッキも選択肢として有効です。こうした処理は、部品の耐久性を向上させると同時に、意匠性の向上や機能追加にもつながります。当社では、こうした表面処理に一通り対応しています。

プレートの切削加工事例

コの字プレート

高精度なプレート切削加工品を入手するための設計ポイント | 精密切削 スピード加工センター.com

こちらは、産業用ロボットの構成部品として使用される高精度プレートの加工事例です。

本製品では、コの字形状の幅寸法に±0.05mm、平面度に0.1mmという厳しい公差が求められました。こうした精度を実現するため、6面をフライス加工した焼鈍処理済み材料を選定しています。焼鈍材は、内部に蓄積された応力が除去されているため、加工時に発生しやすい歪みを抑えやすく、寸法安定性にも優れています。そのため、寸法精度を重視するプレート加工において、非常に有効な素材です。

プレート 抜き加工

高精度なプレート切削加工品を入手するための設計ポイント | 精密切削 スピード加工センター.com

こちらは、A5052アルミ材を使用したプレート部品の抜き加工事例です。

A5052は切削性が高く、一般的には反りや歪みが出にくい素材として知られていますが、本件では以下のような仕様により、加工時の歪みが懸念されました。

・寸法が200×300mmと比較的大型であること
・板厚が6mmと薄板であること
・抜き加工範囲が広い(150×200mm)

さらに、削り加工部分において厚み精度に関する厳格な要求があったため、専用の治具を設計・製作し、加工条件の最適化を実施。これにより、反りや寸法変動を最小限に抑えながら、安定した品質を確保することができました。

まとめ

高精度なプレート切削加工品を実現するためには、単に高い加工技術を追求するだけでなく、設計段階からの「材料選定」「寸法公差の設定」「表面処理の計画」が極めて重要です。

当社では、鉄・アルミ・ステンレスをはじめとする各種金属材料の特性を熟知したうえで、最適な加工条件や治具設計を行い、設計者の意図を忠実に反映した高精度なプレート加工を実現しています。

ご要望に応じた加工提案から、図面作成時のアドバイスまで対応可能ですので、高精度なプレート部品の製作をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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