シャフトの旋盤加工におけるよくある課題と対策
シャフトの旋盤加工は、設計段階からの配慮が品質やコストに大きく影響します。本記事では、シャフト加工においてよく直面する課題と、それに対する当社の対応および設計時に考慮すべきポイントについて解説します。
長尺シャフトのたわみ・ビビリ対策
長尺のシャフトは、加工中に材料が逃げてしまうことでたわみが発生しやすくなります。当社では、φ25〜φ30の径に対して最大300mmまでの長尺加工に対応していますが、こうしたシャフトの加工ではセンター押さえを活用して材料のたわみを抑制することが欠かせません。ただし、極端に細長いシャフト形状は、加工時にビビリ(振動)を起こしやすく、寸法精度の維持が困難になります。そのため、設計時には全長と径の比率、いわゆる「L/D比」を考慮し、極端な細長設計は避けることを推奨しています。
段付きシャフトの段差部形状に関する注意点
段付きシャフトの加工では、段差部の隅にあるR形状が小さい場合や、逃がしが設けられていない場合、極小ノーズRの工具が必要になります。ノーズRが小さい工具は加工中に欠けやすいため加工コストが上がってしまいます。そのため、段差部の設計においては、できる限り隅Rを大きくとるように工夫していただくことで、コストダウンが期待できます。
高い真円度・同軸度への対応とコストのバランス
当社では、真円度および同軸度0.01の高精度なシャフト加工に対応していますが、真円度・同軸度が0.03を下回る厳しい公差が求められる場合は、専用のチャッキング爪の製作が必要となります。そのため、治具設計やチャック圧の検討に時間とコストがかかります。また、これらの高精度評価は3次元測定器や真円度測定器による検査が必要となり、検査工数も増加します。したがって、設計においては必要な箇所にのみ厳しい公差を設定し、それ以外はできる限り緩和することで、コストと納期の最適化が可能となります。
加工熱による寸法変化への配慮
旋盤加工では、加工中の発熱や外気温の影響により、寸法変化や変形が発生する可能性があります。特に、細長いシャフトや肉厚が薄い製品ではその傾向が顕著です。このようなケースでは、仕上げ寸法に余裕を持たせる、あるいは公差を緩和するなど、加工熱の影響を想定した設計が求められます。
材料による加工性とコストの違い
ステンレス系の素材でも、SUS304やSUS316、SUS440Cなどは硬度が高く、切削工具の摩耗が激しくなるため加工コストが上がりがちです。一方で、SUS303は被削性が高く、通常の工具で効率よく加工できるため、コストダウンに繋がります。耐食性や強度の要求レベルによっては、SUS303の選定をご検討いただくことで、品質を維持しつつコストを抑えることが可能です。
端面やキー溝など追加加工への対応と工程の最適化
シャフトにキー溝や端面穴などの追加加工がある場合、通常のNC旋盤では対応が難しく、別工程でのマシニング加工が必要になります。ただし、当社では複合旋盤を用いることで、これらの加工を1工程で完結させることができ、コストダウンに貢献しています。そのため、こうした形状の加工は、複合旋盤を保有している企業に依頼することを推奨しています。
量産品と試作で最適な加工方法が異なることへのご理解
試作段階と量産段階では、最適な加工方法や設備が異なります。たとえば、量産ではバーフィーダー付きの複合旋盤が適していますが、試作ではコスト面で不利になる場合があります。そのため、試作を依頼される際に「将来的に量産を見込んでいる」旨を共有いただければ、当社にて量産を見据えた最適な工程設計を行い、スムーズな移行が可能となります。
高い真円度・同軸度への対応とコストのバランス
当社では、真円度および同軸度0.01の高精度なシャフト加工に対応していますが、真円度・同軸度が0.03を下回る厳しい公差が求められる場合は、専用のチャッキング爪の製作が必要となります。そのため、治具設計やチャック圧の検討に時間とコストがかかります。また、これらの高精度評価は3次元測定器や真円度測定器による検査が必要となり、検査工数も増加します。したがって、設計においては必要な箇所にのみ厳しい公差を設定し、それ以外はできる限り緩和することで、コストと納期の最適化が可能となります。
シャフトの切削加工事例
カムシャフト
本製品は、産業用制御機器に搭載される高精度カムシャフトです。外径切削からタップ加工、穴加工、長溝加工、外径ネジ加工に至るまで、すべての工程を複合旋盤で一貫して実施しています。これにより、高精度を保ちながらも工程集約による加工時間の短縮を実現しました。
通常であれば、NC旋盤による外径加工と外径ネジ加工の後、マシニングセンタに移し替えてタップや溝加工を行う必要があり、段取り替えに伴う位置ズレのリスクが伴います。しかし、複合旋盤によるワンチャッキング加工によって、こうしたズレを解消しています。
食品機械用シャフト
本製品は、食品機械向けに製作したSUS304 シャフトです。先端部の外径φ2mmという極小径形状に対応するために、ノーズR0.2mmの超硬工具を採用し、最適な回転数・切り込み量に調整しています。切削抵抗を抑えることで、先端部の微細形状でも安定した加工品質を保ちました。
また、チャッキング位置の選定にも工夫を凝らし、ワークのたわみを最小限に制御。結果として、±0.015mmという厳しい公差要求にも、量産レベルで安定的に対応しています。
まとめ
シャフトの旋盤加工における各種課題は、設計段階での少しの工夫によって多くが回避可能です。加工側の視点を理解し、材料選定・寸法設計・公差設定において現実的な配慮をいただくことで、品質の確保とコストの最適化を同時に実現できます。当社では、設計者様と連携しながら最適なシャフト加工を提供しております。加工に関するご相談があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。
最後までお読みいただきありがとうございました!