アルミプレートの切削加工
アルミプレートの加工は、用途や求められる特性によって最適な材質と加工方法が異なります。当社では、半導体製造装置や医療機器など、高い精度と品質が求められる分野向けに、プレート加工品を納品しています。
本記事では、当社が取り扱う主要なアルミ合金(A2017、A5052、A6063、A7075)の特性と、それぞれの加工ポイントについて詳しく解説します。
当社のアルミプレート加工に使用する主な材質
当社では、主に以下の材質を用いて、半導体製造装置や医療機器などに使用されるプレートの加工を行っています。
・A2017(ジュラルミン)
・A5052
・A6063
・A7075(超々ジュラルミン)
A5052のプレート加工
特性と用途
A5052はアルミニウムにマグネシウムを加えた合金で、以下の特性を持ちます。
耐食性
A5052は自然に酸化皮膜を形成し、特に海水や塩分環境に対する耐食性に優れています。さらにアルマイト処理を施すことで、耐久性を向上させることが可能です。
加工性
切削や曲げ加工が容易で、溶接適性も高いため、幅広い用途に対応できます。特にプレート材、丸棒、角材など、多様な形状で供給されるため、柔軟な設計が可能です。
強度と耐久性
A5052は中程度の強度を持ち、構造材として広く使用されます。ただし、タップ加工を施す場合、ネジ山が摩耗しやすいため、ヘリサート挿入によって補強するのが推奨されます。また、仕上げ面が滑らかで傷が目立ちやすいため、外観品質が求められる部品にはアルマイト処理が効果的です。
切削性と加工精度
A5052は切削性に優れ、精度の高い加工が可能です。適切な切削条件と工具選定により、反りや歪みを最小限に抑えながら仕上げることができます。また、切削油を使用することで、工具の摩耗を抑え、寿命を延ばすことが可能です。当社では、プレート材やブロック材の削り出し加工を得意としています。
弊社のアルミのマシニング加工で最も多い材質で、プレートやブロック材の削り出し加工が主です。
A5052の高精度板
A5052は流通量が多く、汎用的なアルミ合金として選ばれることが多いです。また、プレート加工で
・加工時の歪みを抑えたい
・寸法精度のばらつきを少なくしたい
・素材のままでも美しい仕上げを求める
といった場合には、高精度板のYH52やFP52が最適です。これらは板厚や平面度の精度が高く、残留応力が少ないため、加工時の歪みを最小限に抑えられます。
A2017(ジュラルミン)のプレート加工
特性と用途
A2017はアルミニウムに銅を添加した合金で、高強度と優れた切削性を持ちます。
耐食性
A2017は純アルミよりも強度が高く、105HBの硬度を持ちます。これはA5052(68HB)よりも約1.5倍高く、自動車のエンジン部品や航空機の構造材に適しています。
優れた切削性
一般的に強度の高い材質は切削しにくくなりますが、A2017は例外であり、精密加工がしやすい材質です。工具寿命に注意しながら適切な切削条件を設定することで、高精度な加工が可能です。
反り対策と加工効率
加工中に熱が発生しやすいため、適切な冷却液の使用が重要です。また、工具の摩耗が早いため、荒加工と仕上げで工具を分けることで、安定した加工精度を維持できます。
A5052との比較
・A2017はA5052より強度が高く、耐摩耗性に優れる
・耐食性はA5052の方が優れており、A2017は防錆処理が必要
・機械的負荷がかかる部品にはA2017、耐食性が求められる環境ではA5052が適している
A6063のプレート加工
特性と用途
A6063は押出し成形性に優れ、主に建築材料やフレーム材として使用されます。
耐食性と美観性
A6063は耐食性が高く、アルマイト処理によってさらに美しい仕上がりが得られます。
押出し材としての優位性
A6063は押出し材として最適で、アングル材やパイプ、角棒などの形状で供給されます。
切削時の注意点
圧延材のため残留応力が残りやすく、切削中に反りが発生しやすい特性があります。そのため、精密な加工では粗加工と仕上げ加工を分けることで、寸法精度を確保します。
A7075(超々ジュラルミン)のプレート加工
特性と用途
A7075はアルミ合金の中で最も高強度な材質であり、航空宇宙や高応力の部品に使用されます。
高強度・高硬度
A7075は引張強度570〜630 MPaを誇り、軽量ながら強靭な素材です。
切削性と加工の難易度
硬度が高いため、工具の摩耗が激しく、適切な切削速度と工具選定が重要です。当社では超硬工具やダイヤモンド工具を活用し、精密な仕上げ加工を行っています。
耐食性の補強
A7075は耐食性が低いため、アルマイト処理や防錆処理が必要です。
他のアルミ材との比較
・A7075は高強度が求められる用途に最適
・耐食性はA5052やA6063の方が優れる
・コストが高いため、用途に応じた選定が必要
アルミプレートの切削加工事例
A5052 プレート

こちらは、産業用ロボットに使用されるA5052プレートです。
本製品には平面度0.05mmという高い精度が要求されました。しかし、2か所の穴加工や端部のL字形状の切り欠き加工があるため、通常のバイス固定ではワークに歪みが生じ、精度を確保することが困難でした。
そこで、当社では専用の治具を設計・製作し、ワークを直接固定せず、治具をバイスで固定することで、余計な応力を抑えながら加工を行いました。これにより、平面度0.05mmという厳しい要求にも対応しました。
A2017 プレート

こちらは、医療機器に使用されるA2017プレートの加工事例です。
また、A2017は内部応力を蓄積しやすく、加工中に歪みが生じるリスクがあります。そのため、当社では粗加工と仕上げ加工の工程を明確に分け、それぞれに最適な加工条件を設定。精度の高い加工を可能にし、安定した品質を確保しています。
A7075 プレート

こちらは、医療機器に使用されるA7075プレートです。
本製品は、ポケット形状の両端に傾斜があるため、通常のエンドミルでは加工が困難です。そこで当社では、R形状のエンドミルを用いた3次元加工を採用し、複雑な形状にも高精度で対応。これらの3次元加工プログラムは、CAD・CAMを活用して作成し、高品質な仕上がりを実現しています。
アルミプレートの切削加工は、精密切削 スピード加工センター.comにお任せください!
本記事では、A2017、A5052、A6063、A7075といった主要なアルミ合金の特性と加工ポイントについて解説しました。
当社では材質ごとの特性を理解し、適切な加工方法を選定することで、高品質なアルミプレート加工を実現しています。
アルミプレートの切削加工に関して、お困りごとがございましたら、お気軽にお問い合わせください!
最後まで読んでいただきありがとうございました!